新製品開発成功のカギ “フロント・エンド・ローディング体制への転換”
新製品開発で世界をリードするまでに至った日本は、どこよりも優れた品質を持った製品を生み出すことを第一目的としてきたと言えるでしょう。その結果、世界から賞賛される新製品を次々と世に送り出すことができました。技術立国当時の開発状況を振りかって見ますと、市場予測、技術・研究開発・試作、生産、販売の一連の流れは、水平分業的な方式でした。この方法は、需要と供給のバランスから見て、需要がはるかに供給を上回っている状況のときには、消費者が待ちの状態であるために、どちらかというと開発者・生産者側に主導権があったはずです。しかしながら、現代のように地球規模での経済の萎縮化を反映した需要と供給のバランスを見ますと、供給が需要を上回っているという単純な現象ではなく、消費者の欲求が満たされている中での供給を強いられています。
現在の新製品開発は、企画・技術研究領域をイノベーターと位置付け、いわば特権階級的存在でもありました。ところが、現代のように「消費者の欲求が満たされている中での供給」という複雑な時代では、イノベーター領域とか製品化に関する領域などに分類して、新製品開発を行うだけでは時代の潮流に答えることができなくなってきています。また、従来のような部門別に分散化された新製品開発方法、つまり、Hand-off方式では、開発当初に製品出荷までのリスクを定量的に抽出することが出来難いために、工程が押し詰まった状況で設計変更が多く発生し、目標とする企業利益を確保することは難しい状況にきています。この現象は、すでに10前から始まっています。
こうした状況を踏まえて、この何とも言えない窮屈な状況を打破するためには、新製品開発を進めるにあたって、従来のようなHand-off方式を踏襲するのではなく、
・部門間協調の「マネジメント」の仕組みをつくり
・設計の後戻りのない商品コンセプトの明確化
・開発と製造が一体となった「プロセス」を構築
などを考慮したフロント・エンド・ローディング体制への転換が必要です。この体制を推進するためには、具体的なプロセスを提示し教育及び効果を測定するための「管理指標」などを併せて確立することも重要になります。