新製品開発の可視化・定量的リスク評価 ”企業理念・研究理念の再構築”
企業理念・研究理念の喪失
ここ数年来、自動車、耐久消費材などの半端な数字ではないリコールの数、ある意味では未曾有の製品開発の危機であると言ってもいいかも知れません。その原因の多くは、品質の悪さによって引き起こされていると言われています。さらに、隠ぺい工作が重なり、二重、三重の被害に発展していることも事実です。コストダウンという大義名分のもとに繰り広げられる熾烈な競争によって、いつの間にか経営者、開発エンジニアにとって本当に大事なことを置き忘れさせられたように思います。
現実に起きている事象
現実に起きています新製品開発の問題の多くは、
(1)第一の課題(開発体制の見誤り)
(2)第二の課題(工程作成の見誤り)
(3)第三の課題(研究開発の見誤り)
のうち、特に第三の課題に起因するのではないかと思われます。つまり、研究開発のうち基礎研究、応用研究のどちらに依拠して開発をスタートさせたらよいのかという起点の選定です。現状では、基礎研究に依拠して進める開発が多くなっているのにも係らず、早くそれらしき答えを望むあまり応用研究に依拠した開発が横行しているからです。そのために、先行研究の調査も結果が示されている文献類を主に進め、その論文が正しいかどうかの判断もできないで利用するので、実施してみてはじめてこの文献が役に立たなかったことに気づくことになります。
課題の抽出
しかしながら、こうした課題だけを取り上げて論じても改善されるのかというとそうではないように思います。それは、課題の隠ぺいという観点にたってみれば、開発エンジニアだけにその責を負わすことはできないと思います。なぜならば、新製品開発は、まさに、企業理念・研究理念との関わりが大きいはずだからです。我々日本人は、それほど理念について深く探求することもなく、論理的な思考で考えるものとは別物であるという認識でいるのではないでしょうか。したがって、不測の事態が持ち上がったとき、企業理念もしくは研究理念に立ち返るのではなく、何とかその場をつくろっていこう、いけるのではないかという極めて貧困な思いが大勢を占めているのではないだろうかと思います。
解決策
このようなことに鑑みますと、新製品開発の過程で起きる第一の課題(開発体制の見誤り)、第二の課題(工程作成の見誤り)、第三の課題(研究開発の見誤り)を払拭していくためには、企業理念、研究理念の再構築が重要なことになると思います。ホームページに掲載されています企業理念を閲覧してみますと、一部の企業を除いてほとんどの企業は啓蒙的な思想で書かれていることがわかります。研究開発理念にいたっては、その内容すら書かれていない企業がほとんどです。このような状況では、何が生まれるのでしょうか。また、開発エンジニアが怒涛の苦しみに置かれているときに、啓蒙的な理念が開発エンジニアの背中を押すことができるのでしょうか。いずれの答えもノーとしか言いようもないはずです。今後益々消費者ニーズと社会構造が複雑化していく中で、新製品開発のプロセスと直結するような企業理念及び研究開発理念の構築が必要になります。