AI時代の実務的創造力(第6回) ”AIを使った「未来の事業創造」”

未来は予測するものではなく、設計し、実装するものである

1. 未来予測の“次の一手”は、事業に落とすことです
第5回まででやってきたことは、

  • 兆候を集める
  • 構造を描く
  • リスクを可視化する

でした。ここから先は、もっと踏み込みます。AIで見えた未来構造を、「事業」という形にまで落とし込む。これが第6回のテーマです。

2. 未来の事業は「3つの問い」から始まります
AIを使って未来の事業を創るとき、最初に問うべきは、とてもシンプルな3つです。

  1. どんな未来の“問題”が必ず顕在化するか?
  2. そのとき、誰が一番困っているか?(未来の顧客)
  3. その困りごとを、どんな“構造”で解決するか?

AIはこの3つの問いに対して、

  • 情報を集める
  • パターンを見つける
  • 構造を描く

という形で、思考の“土台”を一気に作ってくれます。

3. AIを使った「未来事業創造」の4ステップ
ここからは、実務プロセスとして整理します。

ステップ① 未来テーマの抽出(What will matter?)
AIに問うのは「何が流行るか」ではありません。

  • どの領域で“構造的な問題”が深刻化するか?
  • どの産業で“今の前提”が崩れ始めているか?

例:

  • 農業 × 気候変動 × 労働力不足
  • 食産業 × カーボンニュートラル × 規制強化
  • エネルギー × 分散化 × 地政学リスク

AIは、ニュース・論文・政策・市場データから、「問題が濃くなっていく領域」を浮かび上がらせます。

ステップ② 未来顧客の可視化(Who will suffer / benefit?)
次に問うのは、「その未来で、一番困るのは誰か?」

AIにやらせるのは:

  • どのプレイヤーが板挟みになるか
  • どの立場の人がコストを押し付けられるか
  • どの地域・どの規模の事業者が最も脆弱か

ここで見えてくるのは、“未来の顧客像” です。

ステップ③ 未来価値の設計(What will be valuable?)
未来の事業は、「今の価値」ではなく「これから必要になる価値」を提供します。

AIに問うべきは:

  • その未来で「お金を払ってでも欲しいもの」は何か
  • その未来で「ないと困るインフラ」は何か
  • その未来で「規制・制度と相性が良い価値」は何か

ここで初めて、プロダクト・サービス・OS・プラットフォームといった形が見えてきます。

ステップ④ 未来事業のプロトタイピング(How to start small?)
最後に重要なのは、「どこから小さく始めるか」

AIにやらせるのは:

  • 小さく検証できるユースケースの列挙
  • 既存資産を活かせる入り口の提案
  • 規制・補助金・制度との接続案
  • 3年で“意味のある実績”を作るロードマップ案

人間が決めるのは:

  • どの入口が自分たちにとって“必然”か
  • どの順番なら、無理なく積み上げられるか

AIは「選択肢」を出し、人間は「覚悟の順番」を決める──そんな役割分担です。

4. 未来事業創造におけるAIの“正しい立ち位置”
ここが一番大事なポイントです。

AIは、事業アイデアを“代わりに考えてくれる存在”ではありません。
AIは、事業アイデアの“構造と射程を深くしてくれる存在”です。

  • 抜けている視点を補う
  • 見落としているリスクを出す
  • 想定していない顧客像を提示する
  • 別の産業の類似構造を持ってくる

AIは、人間の思考の“浅さ”を補正する装置として使うのが本質的です。

落合以臣

1952年10月(生) 東京都出身、英国ウェールズ大学大学院修了 役職 株式会社ジョンクェルコンサルティング 代表取締役 講師歴任 早稲田大学 社会科学総合学術院招聘講師 顧問歴任 岩手県陸前高田市 環境浄化顧問、日本テトラポッド株式会社 技術顧問 1975年大手プラントメーカー千代田化工建設株式会社に入社。海外および国内の大型エネルギープラントの設計・建設に従事。1990年退社、1990年6月株式会社ジョンクェルコンサルティングを設立、現在に至る。現在では、建設案件に対応した競争入札の急所から試運転までの効率化を目指したプロジェクトマネジメントの導入、製品開発の可視化・定量化の指導、トレンド予測による製品テーマの創造、環境技術に関する開発などを実践している。 所属学会 日本経営システム学会会員 米国リスクマネジメント協会会員