「量産の時代を越えて──炭素の定義が変わるとき」

■ 量産の時代は、静かに終わりつつあります
最近、蓄電池向け炭素材料の“増産”に関するニュースを目にしました。既存市場においては、量を増やすという判断は合理的であり、必要な取り組みでもあります。しかしながら、そのニュースを読みながら、私は「これは過去の延長線上の発想だな」と感じました。未来は、量ではなく、定義そのものを変える者が握るからです。また、株主総会が近くなると、経営に寄与しないことがわかっていても、アドバルーンを上げないといけないという空しが伝わってきます。

■ 炭素は、蓄電池のためだけに存在しているわけではありません
炭素材料は、蓄電池の性能向上だけに使われる素材ではありません。都市の呼吸を整え、CO₂を循環させ、インフラそのものを再設計するための“基盤”にもなります。もし炭素を「蓄電池のための素材」とだけ捉えてしまうと、どれだけ増産しても、未来の本質には届きません。私たちが見ているのは、量産ではなく、反応場の再設計です。そして、用途の拡張ではなく、都市スケールの炭素収支の再構築です。

■ 私たちが取り組んでいるのは、別の地平にある技術です
私たちのテーマは、準グラフェン、GOプロトコル、CO₂からの直接炭素化、小型分散型デバイス、都市スケールの炭素循環設計といった、従来の量産競争とは異なる領域にあります。ここには、「どれだけ作るか」ではなく、“炭素とは何か”を再定義する勝負が存在します。この視点を持たない限り、どれだけ増産しても、未来のルールには触れられません。

■ 準グラフェンが示す新しい地平
準グラフェンの実装が進むと、炭素材料の前提そのものが静かに書き換わっていきます。そのとき、従来型の量産投資は、かつて想定していた役割とは異なる位置づけへと移っていく可能性があります。これは誰かを否定するものではなく、技術が新しい地平を示すときに自然に起こる変化だと考えています。

■ 未来のルールは、静かに書き換えられていきます
既存の企業がどれだけ増産を発表しても、未来のルールは、別の場所で静かに書き換えられていきます。それは、量ではなく、概念の勝負だからです。私は、誰かを追いかけるのではなく、ただ静かに、未来の定義を書き換えていきたいと思っています。それが、最も確実で、最も美しい“勝ち方”だと信じています。

落合以臣

1952年10月(生) 東京都出身、英国ウェールズ大学大学院修了 役職 株式会社ジョンクェルコンサルティング 代表取締役 講師歴任 早稲田大学 社会科学総合学術院招聘講師 顧問歴任 岩手県陸前高田市 環境浄化顧問、日本テトラポッド株式会社 技術顧問 1975年大手プラントメーカー千代田化工建設株式会社に入社。海外および国内の大型エネルギープラントの設計・建設に従事。1990年退社、1990年6月株式会社ジョンクェルコンサルティングを設立、現在に至る。現在では、建設案件に対応した競争入札の急所から試運転までの効率化を目指したプロジェクトマネジメントの導入、製品開発の可視化・定量化の指導、トレンド予測による製品テーマの創造、環境技術に関する開発などを実践している。 所属学会 日本経営システム学会会員 米国リスクマネジメント協会会員