新製品・新事業テーマの創出
事業価値を創造
事業価値を創造するためには、各々の製品の関連機能や開発エンジニアの力を整合的に結合すべきであるという考え方があります。これを一気通貫体制と呼ぶことにします。ここ数年、多くの企業では当然のこととして言われてきました。一気通貫体制を構築する場合、その構成として、モジュール型対統合型という事業展開があります。モジュール型は、モジュールのインターフェースだけを組み合わせるだけで出来上がり、統合型は部品構成全体について試行錯誤を繰り返して行うために時間と手間がかかるという印象を持たれています。したがって、一見一気通貫体制を構築するうえでモジュール型の方がやりやすいように見えます。しかしながら、ここにきてモジュール型と統合型、それら自身を問い直すことが必要であると思われます。それは、製品や事業の長期的な存続可能性は、それらの両方を必要とするという見方もあるからです。また、それは製品の価値創造と製品構成(Product configuration)に関するファイン(Fine.C.H)の製品構成の統合化とモジュール化のサイクルという概念です。
製品構成のすべて
製品構成のすべてがまったく新しいこの世に存在しない製品であれば統合化から始めることができます。構成はすべて一体として検討され、ある種の構成を試行錯誤で決めることができます。市場で構成の評価が定まりますと、次にその構成をモジュールとして考え、モジュールを外注の単位として企業間分業がはじまります。時間が経過して製品価値が競争によって失われていきますと、今度はもう一度製品構成から再点検してまったく新しい構成を考え、より高い価値創造を求めようとします。これは、もう一度統合化へ戻ることを意味します。
製品構成の変化
製品構成の変化は、技術革新と結び付けて議論することも多いと思います。確かに、古くは蒸気機関車から電気機関車、真空管からトランジスターと製品構成は大きな変化をもたらし、事業ないし企業の盛衰がそれに伴ってきたことも事実です。しかしながら、トータルとしてその新しい技術が新たな価値を作り出すから使用するのであって、技術を使うことが目的ではないはずです。技術革新が企業の危機を招くという現象は、技術革新に伴う製品構成の変化への対応が難しいことが原因として上げられます。つまり、製品構成の変化に対して企業の既存のプロセスがすでに適応できなくなってきているからです。
価値の新たな創造
価値の新たな創造は、殆どの場合に製品構成の変化に伴うと言えます。そこであるモジュールのスキームは必然的に変化することになります。しかしながら、モジュール概念がなくなるのではなく、別のモジュールスキームへと変わるだけのことです。あるモジュールのスキームから別の新しい異なるモジュールのスキームへと変化する段階で、その新しいモジュールの適切性や可能性を高めるために、スケジュールの統合が必要と解釈すれば、製品の競争力あるいは価値を持続するためにはスケジュール統合の能力は不可避になります。したがって、どちらの型が一気通貫体制を堅持するうえでやり易いかという視点は適切でないと言えます。むしろ、モジュール化を有効に持続させるためには、開発と製造の他人任せの分断ではなく、スケジュール上での一気通貫体制が必要であるという言い方が適切であると言えます。新たなより高い価値創造を得るためにビジネスモデルやビジネスプロセスを再編する場合には、そのための一気通貫体制を構築するという視点から検討すべきと思われます。