ジョンクェルコンサルティング [Jonquil Consulting Inc.] ジョンクェルコンサルティング [Jonquil Consulting Inc.]

新製品・新事業テーマの創出 ”企業理念・研究理念の再構築”

リコールの増加と製品開発の3つの見誤り

 ここ数年間は、自動車、耐久消費材などの半端な数字ではないリコールの数、ある意味では未曾有の製品開発の危機であると言ってもいいかも知れません。その原因の多くは、品質の悪さによって引き起こされていると思われます。さらに、隠ぺい工作が重なり、二重、三重の被害に発展していることも事実でしょう。コストダウンという大義名分のもとに繰り広げられる熾烈な競争によって、いつの間にか経営者、開発エンジニアにとって本当に大事なことを置き忘れさせられたように思います。
 予てから、現実に起きています製品開発の問題の多くは、開発体制の見誤り、スケジュール作成の見誤り、研究開発の見誤りにあると述べてきました。その3つの見誤りのうち、特に、研究開発の見誤りに起因することが多くなってきていると述べてきました。つまり、研究開発のうち基礎研究、応用研究のどちらに依拠して開発をスタートさせたらよいのかという起点の選定であると言えます。言い換えますと、基礎研究に依拠して進める開発が多くなってくるのにも係らず、早くそれらしき答えを望むあまり応用研究に依拠した開発が横行しているからです。そのために、先行研究の調査についてもあらかじめ結果が示されている文献類を主に集め、その論文が正しいかどうかの判断もできないで利用してしまうので、実施してみてはじめてこの文献が役に立たなかったことに気づくことになるわけです。しかしながら、こうした課題だけを取り上げて論じても改善されるかというとそうではないように思います。それは、課題の隠ぺいという観点にたってみれば、開発エンジニアだけにその責を負わすことはできないと思います。

世界規模で起きたリコール

少し古いニュースになりますが、米国でのタカタのエアーバックのリコールでは、かなり前から会社ぐるみの隠ぺいがあったと米国上院公聴会で指摘されていたことは、周知の通りです。まさに、企業理念・研究理念との関わりが大きいはずですが、我々日本人はそれほど理念について深く探求することもなく、論理的な思考で考えるものとは別物であるという認識でいるのではないだろうかと思う次第です。したがって、不測の事態が持ち上がったとき、企業理念もしくは研究理念に立ち返るのではなく、何とかその場をつくろっていこう、いけるのではないかという極めて貧困な思いが大勢を占めているのではないだろうかと思わざるを得ません。

企業理念・研究理念の再構築

 このようなことに鑑みますと、製品開発の過程で起きる開発体制の見誤り、スケジュール作成の見誤り、研究開発の見誤りを払拭していくためには、企業理念、研究理念の再構築が重要なことになると思われます。しかしながら、ホームページに掲載されています企業理念を閲覧してみますと、一部の企業を除いてほとんどの企業は啓蒙的な思想で書かれています。また、研究開発理念にいたっては、その内容すら書かれていない企業がほとんどです。
 ここで、日本の代表的な素材メーカーX社の企業理念と研究開発理念を以下に上げて見ます。
企業理念
【X社は、「最高の質を追求し、人々の豊かな未来に貢献します」という経営理念のもと、ユニークなスペシャリティー企業を目指した研究開発を行っています。】
研究開発理念
【私たちの研究開発の理念は、「素材の”高品質””高機能”を追求することにより、社会への貢献を果たし、独自性・優位性・社会性を備えた製品・サービスを提供する」ことです。】
上記に抜粋いたしました企業理念及び研究開発理念と称する内容から、何が生まれるのでしょうか。また、開発エンジニアが怒涛の苦しみの中で、上記の企業理念、研究理念と称する内容が、開発エンジニアの背中を押すことができるのでしょうか。いずれの答えもノーとしか言いようもないはずです。今後、新型コロナウイルスの影響によって、消費者ニーズと社会構造の大転換が進む中で、製品開発のプロセスと直結するような企業理念及び研究開発理念の構築が必要となるはずです。

落合以臣

1952年10月(生) 東京都出身、英国ウェールズ大学大学院修了
役職 株式会社ジョンクェルコンサルティング 代表取締役
講師歴任 早稲田大学 社会科学総合学術院招聘講師
顧問歴任 岩手県陸前高田市 環境浄化顧問、日本テトラポッド株式会社 技術顧問

1975年大手プラントメーカー千代田化工建設株式会社に入社。海外および国内の大型エネルギープラントの設計・建設に従事。1990年退社、1990年6月株式会社ジョンクェルコンサルティングを設立、現在に至る。現在では、建設案件に対応した競争入札の急所から試運転までの効率化を目指したプロジェクトマネジメントの導入、製品開発の可視化・定量化の指導、トレンド予測による製品テーマの創造、環境技術に関する開発などを実践している。

所属学会
日本経営システム学会会員
米国リスクマネジメント協会会員

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