新製品・新事業テーマの創出 ”新製品開発とエンジニアリング・フロントエンドローディング”
Hand-off方式の崩壊
新製品開発において、世界をリードするまでに至った日本は、どこよりも優れた品質を持った製品を生み出すことを第一目的としてきましたことは周知の通りです。その結果、世界から賞賛される新製品を次々と世に送り出すことができたといえます。
技術立国当時の開発状況を振りかえって見ますと、市場予測、技術・研究開発・試作、生産、販売の一連の流れは、水平分業的な方式でした。この方法は、需要と供給のバランスから見て、需要がはるかに供給を上回っている状況のときには、消費者が待ちの状態であるために、どちらかというと開発者・生産者側に主導権があったはずです。しかしながら、新型コロナウイルスの影響を大きく受けています現状と、地球規模での経済の萎縮化を反映した需要と供給のバランスを見ますと、供給が需要を上回っているという単純な現象ではなく、消費者の欲求が満たされている中での供給を強いられています。しかも、購買意識が減少している最中での新たな製品を生み出さなければならないという状況です。
以前の新製品開発は、企画・技術研究領域をイノベーターと位置付け、いわば特権階級的存在でもあったかもしれません。しかしながら、新型コロナウイルスの影響を受けて、「消費者の欲求が満たされている中での供給」という誰もが経験したことのないような状況下では、イノベーター領域とか製品化に関する領域などに分類して、新製品開発を行うだけでは時代の潮流に答えることができなくなってきています。また、従来のような部門別に分散化された製品開発方法、つまり、Hand-off方式では、開発当初に製品出荷までのリスクを定量的に抽出することが出来難いために、工程が押し詰まった状況で設計変更が多く発生し、目標とする企業利益を確保することは難しいと言えます。
エンジニアリング・フロントエンドローディング
こうした状況を踏まえて、かつて過去に体験したことのない状況を打破するためには、製品開発を行うにあたって、従来のようなHand-off方式を踏襲するのではなく、部門間協調の「マネジメント」の仕組みをつくり、設計の後戻りのない製品・商品コンセプトの明確化開発と製造が一体となった「エンジニアリングプロセス」の構築を考慮したエンジリアリングフロントローディング体制への転換が必要です。この体制を推進するためには、具体的な エンジリアリング プロセスを提示し教育及び効果を測定するための「管理指標」などを併せて確立することも重要なことになります。