グリーンリカバリー技術 “脱炭素化とゼロ・サム経済”
故サロー先生とゼロ・サム社会
経済の御所であったMITスローンスクール学部長であった故レスターサロー先生(弊社顧問)がご存命であれば、現在のさまを見てゼロ・サム社会からゼロ・サム経済の到来と言われたのではないでしょうか。ゼロ・サム社会は、世界の富の配分が蓄積される国とそうでない国に明確に分かれるという1980年代を象徴する事象でした。その後、サロー先生は日本が世界経済の牽引役を担うと思っているだろうが、EUを中心としたヨーロッパ主導の経済体制が出来上がり、1990年代から2000年代初頭にかけて、EUが世界経済の覇者になるだろうと“大接戦(Head to Head)”の中で明確に述べていたことを思い出します。
そうしたサロー先生の見方に鑑みますと、計り知れない新型コロナウィルスの影響を受けた後の経済の覇者は、どこの国なのだろうかとお聞きしたいところでもあります。多分、サロー先生は「それは国、人でもなく、一時的な活性剤となるテーマに群がる投資という名を借りた場当たり的な経済の塊が、いかにも世界経済を牽引して行くかのような錯覚を与える社会構造になるのではないか」と言われるのではないだろうか。
脱炭素化とゼロ・サム経済
こうした推論のうえに立って現在の事象に鑑みますと、脱炭素化という人類を総なめしたテーマが、まさにそれに該当するのではないかと思います。脱炭素化を牽引する技術は、水素とCCS(CO2を地下に埋め戻す)であると言われています。しかしながら、採算性に見合わなければ、例え一時的なブームを引起し、そこに経済の塊が誕生しても永続的に世界経済を牽引することにはならないでしょう。やはり重要なことは、一時的な投資を対象としたブームを想定した脱炭素化ではなく、採算性を考慮し永続的に支えることができる技術が、本当の意味での“脱炭素化とゼロ・サム経済”を形成するのではないかと思います。